釜焚きご飯にできたて玉子焼き

釜焚きご飯がおいしい食堂

煩悩具足の我は生死(しょうじ)の迷いより食事の迷いが…


 自分は標準体重(と呼ばれる)数値から20キロもメタボッてる。だから痩せたい願望は人並みにある。
 自分なりのやり方もそれなりに持っている。いつもチャンとした朝食昼食は摂らない夕食だけの「一日一食主義」。ただし、ヨーグルト・果物・紅茶は無制限、その上毎日5キロ以上を黙々と歩く、雨でも雪の日でも歩き一日も休まない。食費を掛ければいやでも太るから自主的に倹約している、これは確実に効果的だがもっと絞らねばならないかもしれない、つい自分に甘えてしまうから。他人から見ても全く知られることのないカラカラに乾燥した努力もすべては減量のための苦行と自分に言い聞かせている。

 当初は体重を減らす作業は人生にとって大した意味なんかないんじゃないか、なぜ人間にこんな大袈裟な負荷をかけるんだろう、この世に神や仏があるならばもっと気の利いたレベルの高いことをご教示いただきたいもんだなどと恨めしく思ったりやけっぱちになりかけたこともあった。来る日も来る日も体重計と格闘し一喜一憂している自分が憐れに思えたこともあった。私の無二の親友は真言宗の住職、彼からいただいた仏法カレンダーに『煩悩具足のわれらは生死(しょうじ)の迷いを離れることが難しい』とあるのを読んで深く頷きまた気合いを入れ直したりしてきた。そうこうしているうちに減量に勤しむことがあまり辛くなくなってきた、特に最近は。少しずつだが確実に減量しているせいかな。

 そんな自分が今日は昼食を摂った、年に何回しか食べない昼食を、、まぁ寄んどころ無い事情があってのことだったにしても。それが写真の「ごはんや」さんというレストラン、、いや定食屋さんという方が適当かな。和風ビュフェというか清潔で洒落た社員食堂感覚でアットホームな家庭の味食堂という風情だった。客は豊富なお惣菜を自分で選びトレーに載せ、最後にカウンターで清算してからテーブルにつく。日本のホテルの朝食のバイキングに似ているがちょっと違う。海外のホテルによくあるスタイルだが、料理が一品ずつ小分けしてある分だけ日本的とでもいうのかな。
 特徴は入り口付近に昔ながらの大きなお釜が二基かまどにドーーンと座っていること。そもそも最近電気以外のお釜など見ることさえない。最後に見たのは一体いつだったろうという世界かな。この釜で炊き上げたばかりのご飯は結構おいしい。それに注文を受けてから目の前で焼いてくれる大きな玉子焼き、、何個卵を使ってるのかつい確かめなかったがとにかく大きくてたった158円。頼めばだし汁も入れてくれる。さらに、トン汁、鯖の味噌煮とごぼうサラダをつけて完食してしまった。

 私はこういったスタイルのお店があることさえ知らなかった。自分の好きなものを好きなだけ食べられ料金だって非常にリーズナブルである。とはいえ味はけっして悪くない、味に文句はないがあまりこういう気の利いた良いお店がたくさん近所にできることには文句がある。一度味を占めれば意志の弱い自分が徐々に誘惑に負け、宮路おさむの<女の操>ではないが近年ずっと守り通した「一日一食主義」が危うくなってしまう。