大手新聞研究会 活字の暴力〜再販制度の記事

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 学生運動時代に青春を過ごした我々は、当時から「活字は信用するな」が合言葉だった。残念ながらこの平和ボケした国には、活字やテレビのコメンテーターの話を盲目的に鵜呑みにしている人が多いことも事実である。


 私の手元に読売新聞2006年2月20日付けの切り抜きがある。記事は再販売価格維持制度に関する全国世論調査について書かれている。この調査は同年2月11〜12日に読売新聞社独自で実施したものとされ、「全国どこでも基本的に同じ価格で販売することを定めた新聞の<特殊指定>制度について」の回答を求めたものとなっている。調査はどこで誰に行ったのか興味があるが、面接方式だとしか書いてなくてそれ以上を知ることはできない。
 それによると、『新聞の「特殊指定」制度について、「続ける方がよい」と回答した人が計84%を占めた。「そうは思わない」は計11%だった』との結果を得たとなっている。


 私はこの記事を見た瞬間に「でっち上げだ!」と叫んだ。こんな数字あり得ないと直感した。
 この年、2006年は久しぶりに公正取引委員会の特殊指定見直しの年だった。しかも6月に迫っている。世論誘導を図っているんじゃないかと瞬時に察知した。それこそがマスコミの得意技でもある。
 そもそもこんな調査をして記事にすること自体、特殊指定があるいは再販制度そのものが新聞社自身の利益を守っていると自白しているのではないか。しかも信用ならない数字が公式に記事として出るとあっては、、、もしこれがでっち上げなら新聞社の暴力どころではなく詐欺行為である。読売新聞社に調査の詳細を明かしてもらえばひとりひとり再確認することができる。しかし、絶対それは明かさないだろう、なぜか?それは新聞社が個人情報の保護ということを盾にするからだ。まずは絶対バレないという前提ありきの記事と思える。


 到底釈然としない私はいろいろ考えて、2月25日から4月8日まで独自で聞き取り調査を実行した。この期間に出会った友人知人、たまたま話す機会があった方々に回答者になってもらって正確な数字を集めた。中にはゴルフでご一緒した方や病院の待合室で世間話の延長で問いかけた人もいた。話が中途半端になったケースを除いて、きちっとしたものが83サンプルとれた。
 まず特殊指定、または再販制度をご存知かという質問に、よく知っていると回答した方は4人だけだった、しかもかなり正確に解説できた方は一人だけ。残り三人は意味はほぼわかっていたが言葉で詳細に説明することはできなかった。再販制度か特殊指定の言葉を聞いたことがあって、なんとなくわかるという方は先の4人を除いて13人いた。残りの66名は「なにそれ?」「よくわかんない」でなんと全体の79%に上った。


 よく理解されてない人たちにも以前の本や化粧品にも触れ、簡単な解説を加えてから<再販売価格維持制度(再販制度)における新聞の特殊指定>を質問したところ、、「続ける方がよい」と回答した人は27名(32%)、「なくてもいい」、「廃止したほうがいい」の合計は22名(26%)となった。「どちらでもよい」が34名(40%)という結果であった。
 廃止を望む方の多くは新聞のサービスの不平等にかなりの不満を述べていた。同じ銘柄、同じ購読料、似たような配達時間なのに、短期で交代するとビール券、ギフト券、洗剤や雑貨をもらっていることが腹に据えかねるというのだ。新聞社は特殊指定を受けていることで読者の均一なサービスができていることを挙げているが、現実には全く伴っていないことをご存知なのだ。それにしても、結果が違いすぎやしないか。


 宅配制度については、読売新聞社の調査では「続ける方がよい」が91%、こちらの調査では49%、「なくなっても構わない」は同様に7%と43%とかなりの食い違いを示した。それにしても不思議に思うのは、昨今、実購読率が50%に満たない地域も出てきてるというのに、91%が続けることを望んでいるとは?この点については調査の結果をどう見ているのか、読売新聞社の説明を聞きたい。
 ついでに特殊指定という、かなり馴染みのない制度を100人のうち84人が存続を希望しているなんて、一体どういう風に納得させてくれるんだろう。もし仮に、再販制度や特殊指定というややこしいことをご存じの方の中で---というならわかる。そうだとすると、その制度存続を望む人は消費税率以下ということになる。
 記事には『特殊指定が廃止されると、過度の価格競争によって販売店の経営悪化などを招き、配達コストがかかる山間部、過疎地などでは新聞の値段が上がったり、戸別配達(宅配)が打ち切られたりする恐れがある』という記述もある。過度の競争は今に始まったことではない。本音を言ってしまえば、特殊指定が廃止されると最も困るのは新聞社そのものであることは、誰が考えてもわかる。販売店ごとの縄張りがなくなり、購読料もばらばらになる。これは購読者にとっては歓迎すべきことだが、発行本社にとっては忌々しき事態になるからだ。


 問題は、こういったウソ記事とは言わないが到底常識では承服できない記事を、ウソかほんとか調べようがないからと言って我田引水的に書く新聞と、それを全くエレベーターのボタンを押すのと同じくらい疑念を持たない人たちである。この両者が存続する限り社会は彼らの好いように利用されてしまう。
 実は昨日も読売新聞に<世論調査>が掲載された。記事には『読売新聞社が実施した全国世論調査(面接方式)で、情報や知識を得るために「新聞が必要」と考える人が「どちらかといえば」を合わせて92%に上った』と書かれている。現実の購読率から見て、読んでない人まで含めて必要だなんて答えるのかね、村上春樹さんじゃないけど必要ないから読んでないんじゃないのかな、どこから出た根拠なのかわかんないが一体ありうる数字なのかねと聞きたい。まったくいい加減にしてよ、なんでも書けばいいってもんじゃないよ。私は、新聞社の世論調査なんか絶対信じないけどね。


 結局、昨年はあの迎合が上手な中川秀直前幹事長(幹事長になる直前だった)が委員長になり、特殊指定を守るための超党派の委員会がいつのまにか形成され、最終的には公正取引委員長のあれほど強い強い反対を押し切って堅持されてしまった。
 どんなご褒美をもらったのか知らないし、新聞を敵に回すことでどんな軋轢があるかどうか知らない。
 それにしてもですよ、あの「赤旗」までが尾っぽを振って「サンセーイ」と手を挙げたのにはビックラこいた。情けない話だ、君がやらねば誰がやると言いたい。結局、共産党の資金の多くがどこから出るかということを考えれば、何となく納得がいくが詰まるところ自己利益に走ったんだろう。もうエラソーなことは言わないでほしいな。結局寄らば大樹のかげ、、ブルータス、お前もか!


 今後、大手新聞研究会の話はだんだん面白くなる。実はこの再販制度を維持したことが今になると新聞社の重しになってきた。それが総論で書いた今月1日の記者会見(---大手新聞社が大きく舵を切った---)につながる。でも昨年の時点で特殊指定を解除していたら新聞社は空中分解していたろう。どちらにしてもどうにもならないジレンマに襲われている。
 まぁ、しばらく(数年間)推移を眺めていてほしい、しばらくすると新聞各社は私が書いたような意見を集めて、特殊指定から外れても良いという態度に変わっていくと推測している。そうなるとこの原稿も結果的に意見として利用されることになるのだが…。分水嶺はネット次第かな。続きは順番に筋道立てて解き明かす。