Vol.4 常夏の島ペナンは複雑な民族構成

多民族の複合国家


 日本はお盆休みに入った。海に囲まれている日本列島はまるでタツノオトシゴを天日干しにしているような有様だ。連日37〜38度というから、暑さには強い自分もテレビの気象情報を聞いてるだけでゲンナリしてくる。
 ペナンの観光局が出した月別のデータが手元にある。一日の最高気温は年間を通して31〜32度、最低気温は23〜24度と判で押したように変わらない。つまり真夏日がず〜っと続き猛暑日はないということ。ドレスコードがあるレストランや、冷房が強いホテルなどを除けば一年中半ズボンにTシャツ、足はサンダル履きで過ごせる。一日何回もシャワーを浴び、夕方になるとプールに飛び込んで体を冷やした。
 私が借りたコンドミニアムは海沿いで12階の部屋だったので、涼やかな海風が部屋を吹き抜けて行き冷房を使わない日中が多かった。ペナン島は赤道に近い北緯5度付近、しかし世界的に記録的な猛暑の気温を残すのは熱帯ではなく温帯である。原因を知る知識はないがラニーニャとかエルニーニョは関係ないらしく不思議なことだ。

 ペナン島はかつてイギリス人に支配された歴史がある。どうもイギリス人はマレーシアの暑さには参っていたと思われる。それもそうだろう、スコットランドアイルランドの寒いところから来れば大概へばってしまう。だから彼らはやたら避暑地を求めた。それがペナンヒルであり、ブキッ・ラルートでありキャメロン・ハイランドなど標高の高いところだった。
 日本では冷房温度を28度に設定して多少なりとも環境に配慮しましょうなんて言っている。ところがペナンでは建物の中はこれでもかとばかりに冷やす。「寒さへの憧れ」みたいなものがあるんじゃないか。移住当初、まずは空港の寒さに驚き、健康診断で行った病院では風邪をひきそうになった。オフィスの中では長袖を着ている女性も多い。街を歩くと妙なことにわれわれのようにビタビタに汗をかく人が少ない。生まれ育った環境が違うと体が対応するのかもしれない。私は日本の夏に鍛えられていたから多少は耐えられた、でも最初の半年はゴルフ場の暑さに閉口したものだ。

 マレーシアはとにかく多国籍、多民族国家である。もちろん宗教も生活習慣も様々ではあるが、例えば前首相のマハティールさんが施行したブミプトラ政策などの政治的バランスを取って平和に暮らしている。マレー人という定義さえわれわれ外国人にはよくわからないところがある。法律では「マレー語を話すこと、イスラム教を信仰すること、マレーの習慣(アダット)を尊重すること」がマレー人の条件となっている。これを見た限り血や民族のルーツをあまり重視してないとも受け取れる。マレーシアの国全体では60%くらいがマレー人と言われている。これにはオラン・アスリや前述のブミプトラと呼ばれる先住民族も含まれている。
 しかし、ペナン島だけは少し様子が違う。華人系マレーシア人が人口全体の65%くらい住んでいる。おもに雲南省福建省から南下して住み着いた人たちと言われる。街の中で何気なく撮ったスナップを見ても、ずいぶん多種多様な人が写っている。世界中の人たちはそれぞれの国でそれぞれの夢を持ち、それぞれの明日へ向かって歩んでいる。暑さに負けているわけにはいかない。