一枚の写真

White Tigers

ホワイト・タイガース


 これはシンガポールの動物園で撮った一枚である。夫婦そろって動物好きなので、出かけた先では動物園に足を運ぶ。動物園といっても千差万別で、国によって動物の扱いがものすごく異なる。動物園に行けばその国のことがわかると言っても言い過ぎではないだろう。
 ここは結構有名なので見学された方も多いかも知れない。実に自然を巧みに生かして、つまり、動物たちの居心地が良い環境を上手に作っている。かなり広いがセクションの区切りがうまくて苦にならなかった。いくら見ていても飽きない感じがした。
 この経験は2004年の12月だった。その当時の記述があるので加筆して掲載しておく。(当時、ペナンから発信していたサイトに載せたもの)動物園だけのことではなくシンガポールに滞在しての感想だった。(あの三頭、今も元気なんだろうか?)


まず最初にスッ飛んで行ったのが動物園でした。私はとにかくトラが大好きです。以前からホワイトタイガーの話しは聞いていただけに早く見たい気持ちでいっぱいでした。

 右手の横になってる一番大きいのがOmar、彼は水が大好きで、その太い足でトントンと何かを叩くのがクセだそうです。左の彼女はWinnie、顔の縞がとてもきれいな美人です。奥に顔だけ見えるJippieは背中の文様がとてもきれいですが、非常に神経質でよく唸り声を上げ、ときどきヒステリックになるそうです。

 彼らはいずれもインドネシア生まれの大変珍しいベンガル・ホワイトタイガーでした。絶滅危惧種で世界中に2,500頭あまりという話しです。

 数が減っている原因はやはり人間で、言わずと知れた乱獲にあります。このトラゾーンの脇に保護を呼びかけるビデオが四六時中流れています。<トラの内臓が不老長寿の薬になるという科学的根拠はまったくありません。また、毛皮や骨の加工品には手を出さないでください。トラの乱獲を抑制するのはあなたがそれらの製品を買わないことです>、まったくその通りですね。このユニセフのプロモーションビデオは密猟者が乱獲しているシーンとか、骨を砕く工場の様子など、生々しく伝え、ジャッキーチェーンも出演していてとても説得力あるものでした。

 私は動物好きなので世界の動物園は少なからず見てきました。しかし、このシンガポール動物園は1973年開園以来、オープンシステム(きわめて自然に近い環境)が行き届き、どこかの国のように動物たちを狭い檻に閉じ込めるというイメージはありません。とにかく「金網というヤツ」が鳥や蝶などの例外を除くとほとんど見当たらないのがすばらしいと感じました。

 ご存知のようにシンガポールはマレーシアから独立した小さい(東京23区+10%)国で約420万人が暮らしています。4人に3人は華人系で発展を続ける非常に経済力のあるアジアの先進国。街にゴミを捨てると罰金という市中は大変美しく、昨年6月にはMRT東北線も開通、世界屈指のミュージカル・ファウンテン(音楽とレーザー光線の噴水ショー)で知られるセントーサ島は一大テーマパークとして近隣の国から多くの人が訪れます。シンガポール川の河口はこの国の歴史を築いた場所でもあり、由緒ある場所に立つシンボルのマーライオン北島三郎さんに似ていませんか?)はぐっと大きくなって引越しをしました。

 それでも私が非常に残念だったことは、人工的で画一的で無機質な街にあったのは先進国独特である<失った心の豊かさ>でした。巧みに観光客をだまそうとするタクシー運転手、純朴さのない子供たち、笑顔で働く余裕のない人たちがたくさんいました。日本も最近まで教育関係者が「心の豊かさ」をスローガンに掲げていました。水の50%以上をマレーシアから輸入しているという強いストレスは、資源を持たない超先進国日本とどこか通じるところがあるのでしょうか。

 極めつけは東京では指折りのS予備校(シンガポール校)の若い学生たちが、オーチャード通りの賑やかなところでたむろし、帰り際に紙コップを踏んで潰して蹴ったまま帰ってしまったのを見たことでした。日本人が日本人の恥を海外で見るのはとてもツライことです。(他山の石かな?)