秋のある日

秋の陽に包まれて


 碧い空と白い雲に誘われ
 本を抱えて森へ行った
 どうしても行きたくなる陽気で
 とてもじっとしてなんかいられやしない


 母の手に触れた時のような
 譬えようもない柔らかな陽がそこにあった
 アイボリー色した紙の上に
 木漏れ日が活字を浮かび上がらせている


 心地よい翠の風が吹いていた
 少し離れた所から
 花の香りを運んで来る
 私は甘い芳しさに包まれながら秋を纏った


 蝉の声が聞こえる、、まだ、、
 本の上に小さな緑色した木の実が落ちてきた
 枯葉が足元でサワサワと踊っている
 いたずらな風はまだ読み終わらないページを捲る


 大きな蟻が一匹、本の上に、、
 どこからか子供の声が聞こえる