『美味しいお料理店・日本シリーズ』の没落

秋・トンボ


 それってなんかおかしいと思うんだよなぁ、だってさぁ、日本中のグルメを巻き込んだ本当の『美味しいお料理店・日本シリーズ』って言えないじゃん。えっ、なにが言いたいのかって?言いたいことは1位同士がガチンコで戦ってこそ真の勝者だということ。こんなこともうずっと前から言ってるんだけど、埒が明かないんだよね。あまりバカげたこと続けていると、本来のグルメファンまで愛想尽かしちゃうんじゃないか、オレみたいな根っからの熱狂的(でもファナティックではないよ)ファンをさ、ファンあってのモノダネじゃないのか。
 まぁ、全国的にしかも半年以上かけて日本一の「味」を決めようというのは素晴らしいことなんだと思う。もう歴史も古いし毎年楽しみだったんだよね、少年少女から100歳以上のお年寄りまで。
 でもさ、決め方に問題ないかい?今年からそれは日本を東西に分けてそれぞれ1〜3位を投票、その中からくじ引きだってぇからよく判んないんだよ。そうそう、くじ引きなんて言わないで<クライマックス・シリーズ>って呼ぶらしいけどね。どんなネーミングでもいいけどさ、何のために時間かけて1位を決定したのさ。そこにロマンは介在しないのか。
 今年はねここまでの経過を見ると西では1位が最高級の神戸牛(神戸肉)で知られた明石の西神飯店が、2位は小倉駅から歩いて10分にある小さなふぐ屋さんで「竹うち」(ここはマジで想像以上です)、3位は京都祇園にあるぶぶ屋のお茶漬け(大好き)でほぼ決まり。迷えばきりがないんだけれどね…。それから東は1位にお江戸日本橋の「源氏香」の特別会席、2位は小樽の寿司屋さん「日本橋」(こういう屋号)、3位は宮城県塩釜市塩竃料理「巨船亭」特に「千賀の浦」のあんこう鍋と最終的には和食中心でおそらく決まるんだろうな。
 ここまで来れば双方の1位同士が激突して雌雄を決するというのが本来ではないかい?ところがこれをくじ引きではせっかくの厳選も艶消しだね。たとえば3位同士のぶぶ屋と巨船亭ということもありうる。もう日本シリーズとは言えないだろうな。
 実はこれには裏事情があったんだってさ。東のあんこう鍋「巨船亭」のオーナーは『美味しいお料理店・日本シリーズ』選考委員会に腕力を利かす影の大権力者で通称大威張りのナベさんて言うんだって、それも3年連続日本一を逃したんで自分の「巨船亭」を有利に運ぶための作戦変更らしい。ほら、歌や文学、そうそう絵画の世界にもどこでも居るじゃない、こういう古い体質のゾンビ的日本人て。西も東もとにかく3位になっておけばあとはくじ運次第と言うことになる。もうなりふり構わずっていう感じだよね。
 圧倒的多数のファンはこれで大分白けちゃったね、だって真の日本一を決めるわけじゃなくなったんだからさ。結局、ファンを引き付けるっていうのは愛情が要ると思うんだよね、でも大威張りのナベさんはそもそも料理を知らない人で単なる雇われ経営しているだけだからね、ファンの気持ちを汲むなんて所詮無理な話なんだよね。もう一度言うけれど、ファンあってのモノダネなんだよねこういうものは。巨船亭が勝てば何とかなるなんて、表層的で狭小なことを考えてるからおかしくなるのさ。見なさいよ、すでにファンはお店に足を運ばないしテレビも取り上げなくなっちゃったね、反応は的確だよ。今年からは『美味しいお料理店・日本シリーズ』の日本一は重みも何もない、日本一なんかじゃなくなったってぇことか、寂しいね。