核磁気共鳴画像(MRI)を体験する

コスモスとマリーゴールド


 数ヶ月前から、右足の丁度靴ヒモを結ぶあたりに、百円玉より大きく五百円玉より小さな一種の瘤(こぶ)ができて気になっていた。特に痛いわけではないがその部分に違和感があり、無理して動かすとゴキゴキいう。ひと月ほど前から整形外科の先生に診てもらい、当初アテローム(粉瘤腫)という良性の腫瘍ではないかという疑いがあった。その後、念のためにと形成外科の医師を紹介され診断を受けた。形成外科の医師には単なる水がたまってるだけと診断され、CTや超音波を撮ったのちに処置することになった。麻酔をした後で注射器を刺し吸い取ろうとしたが全く何も出てこない。どうも医師の診断通りではなかったようだ。
 ご破算で願いましてはというわけで最初からやり直し、今日はMRI「核磁気共鳴画像法(Magnetic Resonance Imaging)」の初体験と相成った。作業が始まると大きい音がするというのでヘッドフォンをつけさせられ横になる。足の部分が機械に飲み込まれると確かに大きな音が始まった。私は天井の煙感知器を眺めている。ガッガッガッと最初は道路工事の削岩機のような音、しばらくするとツーチャッチャ、ツーチャッチャとドラムを刷毛で撫でている音に変わる。私は煙感知器を眺めながら----そういえば今日本に帰ってきている丸山茂樹選手、この間のサントリー・オープンをテレビで見ていたら、彼も膝のガングリオンの手術をしたとか解説者が言っていたな。ガングリオンとアテロームはちょっと似ている。除去前は屈んでラインを読むことさえできなかったらしい-----なんていうことを思い出していた。
 やがてジビー、ジビーとウルトラマンが発するレーザービームの大きな電子音、そしてズビッ、ズビッ、ズビッというターミネーターが故障した時のような音など次々に流れ、また削岩機に戻るという調子。片足25分位、両方で約一時間で終了。結果は形成外科の医師から直接電話が来ることになっている。今日のMRI治療費は5,900円なり。
 終了してから着替える間、係りの医師にMRIって何ですか?と質問する。それは核磁気共鳴の物理現象を応用して、人体の断層撮影や含有物質の同定を行う方法とか教えてもらったが全く理解できない。まぁいっかと外に出て近くの公園に行き1時間くらい本を読んできた。空はあくまでも青く完全に秋の空だった。