京都「一の傳」魚のご馳走

「一の傳」西京みそ漬け


 知り合いから『美味』が贈られてくるときはなんともうれしいものである。食いしん坊の私は季節ごとに、土地ごとにある旬の味に出合うとき、心底日本人でよかったなぁと思う。
 3日前、京都の「一の傳」から魚の西京みそ漬が届いた。大変有名な店で、たしか昭和初期創業で中京区の柳馬場通りあたりにあったと思う。近くまで行ったことはあったが、その時は立ち寄る時間がなかっただけに今回のご贈答には感謝感激だった。

 西京味噌京都御所に納めるための宮中料理用で、米こうじが利いた独特の甘みがある。この上品な味わいが京都料理の特徴だ。極上の魚の切り身をその味噌に丁寧に漬け込み、時間と手間がたっぷりかかった逸品である。したがって、クール便で我が家に届いてから、冷蔵庫で3日ほど寝かせる必要があった。のどをゴクゴク言わせながら待ったその3日が過ぎた。
 まずは銀鱈から、たまらない味はほのかな味噌の香りとともに胃袋に消えた。まだ金目鯛、メロ、キングサーモンと控えていて毎晩楽しめそうだ。それに、結構たくさんの味噌がある、ためしに何か漬けてみようかな。

 実は先月も二つのいただき物があった。ひとつは山形の特産<さくらんぼ>、生産農家の方が摘んだその日に送ってくれたもので、それはもう例えようがないほどおいしかった。今年は昨年ほど採れなかったようで高価なものでもあり、あの自然の甘さは抜群だった。もうひとつが新潟の<へぎ蕎麦>、淡い緑色の蕎麦は普段口にできないもので蕎麦好きの私たちはその食感を堪能したものである。
 ずっと昔、今のようなクール便というものはなく、こうして<コールド・チェーン>の恩恵に授かる私たちは便利な世の中になって全国の味が楽しめるようになった。産地と自宅は直結し、インターネットの普及もあってどんどん『美味』を味わうことができる。まことにありがたいことだと素直に思う。

 それにしても今年の梅雨は中休みが長い。今日も晴れ間さえ覗いていた。 
 空梅雨に 枯れ紫陽花や 日傘行き (づれずれ草)