自分探しの旅

池田満寿夫美術館



 短い旅が終わり、千葉のあばら家に帰ってきた。遅すぎる紅葉と落ちるには早すぎる雪が、一生で何度もお目にかかれないだろう景観を与えてくれた。まったく世の中二律背反なことが多い。天気が荒れてがっかりすることもない、別の感動が待っている、人生すべからくそんなものか。


 千葉から東京、埼玉、群馬県は黄金色の妙義山の麓を駆け抜け、雪深い妙高越えの長野、快晴の親不孝海岸新潟、氷見の美しい海の富山、白川郷の岐阜と走行距離2000kmになんなんとする距離を走破した。毎日、それも数時間ごとに激しい景色の変化があった。人は何のために生れ何をして生きるべきなのか、家をはるか離れ見知らぬ土地を歩き、見知らぬ人たちを見ているとそんなことをふと思う。「旅」は自分探しの旅だと思う。


 帰路、松代に立ち寄り<池田満寿夫美術館>を見せてもらった。素晴らしい作品の数々が心を揺さぶった。多忙を極めた氏だったが、故郷に建設されたこの美術館のために心血を注いだ。そして、いよいよ完成の声を聞いたとき予告なき死の旅に出た。主のない美術館は多くの関係者によって開館され、今年で10年になった。