夏の終わりの風物詩

蜻蛉つり


 ひと月ほど前から右腕を高く上げた時肩に痛みがあり、左腕も二の腕が痺れていたので医者に行った。レントゲンを撮ってもらって診察を受けた。私が診察を受けている先生は2006年、ル・マンの日本チームのチームドクターを務めた先生である。その先生が「首の付け根の骨と骨の間がすこし詰まっているのが原因です」とおっしゃり薬で少し様子を見ましょうということになった。大部分はトシのせいなのだが枕も少し関係しているようだった。
 3日前からその枕を少し高くしてみた。いつもの枕に3センチくらいの柔らかいクッションの下駄を履かせてみた、これがなかなか具合が良い。薬のせいかまくら改善のせいか分からないがとにかく徐々に改善されているような気がする。やっぱり枕というのは高さ、柔らかさなど自分に合ったものとそうでないものがある、あまりタカが枕と軽く考えてはいけないのかもしれない。
 せっかくの機会だ、ついでに「枕」について調べてみた。古いことはよくわからないが、今のような形の枕が使われ始めたのは12世紀ごろの十字軍からだという。もともとアラブにはクッションのようなものはあったらしい。それを十字軍がヨーロッパに持ち帰り、地元の気候風土に合った素材で「枕」というものを作ったのが起源とされている。ベッドの上で起き上がったときはクッションにし、暖かい羽毛を使って寒さも凌げるものを枕にしたという。自分は子供の頃から布袋にそば殻やもみ殻、小豆などを入れた一般的なまくらを使っていた。時代劇で良く出てくる箱枕というやつ、首に当てる形でよく寝られたねあれで、髪形を守るのが大事だったんだろうな。今の時代は家具屋の枕売り場に行くと迷うほどの種類が置いてある。係りの人に診断してもらって自分に合ったものを探すと話が早いはずなんだが、それでもなかなか思うようにいかないのが「枕」だと思う。

 夜も更けたこの時間、外でゴロゴロ音が聞こえる。雷さんが近づいて来そうでなかなか寄ってこない。ザッーーと降ってくれないかな、それでも涼しい風が窓から吹き込んで夏が徐々に遠のいていく気配が伝わる。
 夕方、補虫網を持った子供たちが夢中でトンボを追いかけていた。捕まえたというので見せてもらったら2センチくらいの糸トンボだった。子供のころ、赤とんぼの目の前で指をくるくる回していたことを思い出した。男の子たちの蜻蛉つりの姿は夏の終わりの風物詩だ。
 子の声が風の高さの補虫網   今瀬剛一